こんにちは。
今回のテーマは「試合中に監督として言うこと」です。前回の記事では練習中に言うことについてまとめました。実際に現場に立ってみると言いたいことはたくさん出てきます。しかしその言いたいことの「どの部分」を「どのようにして」伝えるかについて整理できていなければ、言われた側は理解できなかったり混乱したりしてしまうでしょう。前回と今回の記事でまずは自分の頭を秩序立てていこうと思います。そうしなければ他者にうまく伝えることができるわけないと思います。
ポイントを先に述べるとすれば、練習は個人に注目し、試合はチームに注目するということです。
目標を決める
まず試合に入る前に決めなければならないことがあります。それは目標です。(作戦を立てて練習するのは当たり前だから省いてます。)その試合に勝つのか引き分けるのか、何点差がいるのか、内容を重視するのかなど明確な目標を持たなければなりません。サッカーは集団のスポーツなので試合に対する姿勢を同じ方向に向ける必要があります。目標が決まっていれば集団をまとめやすいのです。
目標を遂行する
次は試合当日の話です。大切なことはこの目標を試合中も意識し続けることです。目の前の試合でチームはその目標を達成することだけに集中する必要があります。スコア、結果、試合内容が重要なのです。個人の良し悪しは二の次です。確かに個人に注目するのは大切ですが、その試合の目標を達成するには最も重要な要素とは言えません。このことを心に留めなければなりません。
日本では個人のプレーに注目しすぎているのではないかと思います。実際、僕は試合中にチームよりも個人のプレーに関する指示をしたり、または、厳しいことを言ったりする指導者を多く見ています。個人のプレーにフラストレーションをためることはあるけど、それをそのままぶつけてしまうことは試合に悪影響しか与えないと思います。 この状態だと、選手にとってはその試合の目標が「ミスをしないこと」や「ボールを持っている時にいいプレーをすること」になってしまいます。目標がバラバラになるだけでなく利己的なプレーをすることになってしまうのです。大切なことはその試合の目標を達成することです。指導者が明確に練習と試合の切り替えをすることが大切なのです。
サッカーは格闘技
目標を達成することが最も重要なことで、個人の善し悪しは重視しないことを述べました。こう考えると、試合では11人対11人のスポーツと思わない方がいいでしょう。1対1の戦いと思わなければなりません。冷静に考えると、これも当たり前のことでしょう。サッカーは1つのチーム対1つのチームの戦いだからです。個人のスタッツや得点数でサッカーの試合の結果が決まるのではありません。チームが起こした現象のトータルでどちらが優れているかなのです。 1対1のスポーツとして捉えることができると、ほかの1対1のスポーツを参考にすることができます。みなさんは1対1のスポーツと言われて何をイメージしますか。僕は空手をやっていたので格闘技をまずイメージします。だから格闘技を例にとって考えを進めていきます。(僕がどれくらい強かったかは想像にお任せします。)
日本では格闘技は野蛮なものだと、力があってバカがやるものだと思っている人が多くいると思います。実際、僕が格闘技をやっていると言うとそのように言われたりそう思っているような態度を取ってくる人が多いです。確かに力が強くてただ殴ったり蹴ったりすることが好きな人もいますが、そのような人はトップレベルになれません。格闘技は非常に頭を使って駆け引きをしなければならないスポーツです。しかも自分が倒されるかもしれないというプレッシャーの中で。格闘技を例にとるためにこのことはまず知ってもらわなければならないことです。 ここから格闘技をやっていた頃の僕の経験や考えを部分的に書いていきます。僕は背が小さく筋肉もほかの選手よりはなかったので頭を使って勝負していました。 例えばパンチは弱いパンチと強いパンチ、速いリズムで打つパンチと遅いリズムで打つパンチを使い分けていました。相手が僕のパンチの威力に慣れたり、僕のリズムが読まれて構えられたら効かなくなるからです。
相手にパンチや蹴りを効かせて勝つということが目標だから全部強い必要はありません。強弱の使い分けやリズムの変化をしていくことで弱いパンチでも効くことがあります。一発の攻撃を効かせるためにほかの攻撃があるのです。他の攻撃は強かろうが速かろうが疲れるような攻撃だろうが一発のための「フリ」になります。
このようなことこそサッカーで大事なのではないでしょうか。目標が勝利の場合、相手よりも1点だけでも多く奪えばいいのです。そしてその1点のために個人のプレーはあるべきだし、そう解釈しなければなりません。時にはあえてパスミスをして共通理解を促すことがあるかもしれません。または、シュートミスを1点のための「フリ」だとして解釈せざるを得ないことがあるかもしれません。そして当然、プレー強度の変化やプレースピードの変化をしなければなりません。
監督は1つのチームを率いているわけです。格闘技のようにチームが相手チームとの駆け引きで勝っているかどうかをピッチサイドから見てアドバイスを送り続けなければならないのです。具体的には、試合前の戦術を適切に実行できているか、普段やっている練習を適切に応用できているかなどについて声かけをしなければなりません。個人について評価している場合ではないのです。ましてや、試合中に個人を責めるような言葉を投げかけてはいけないのです。なぜならその試合の目標の達成が困難になるからです。
個人へのアドバイス
それでもやはり個人に言わなければならないことはあると思います。個人に言う時は細心の注意を払わねばなりません。その試合の目標を達成することが最重要なことなので、それを阻害するよなメンタルやモチベーションにならないように言わなければなりません。これを理解したうえで厳しく言うことは全然ありだと思います。
僕が特に言うべきだと思う内容は「個人を解放できる」内容です。以前「個人の解放」についての文章を書きました。それはボールホルダーが考えなければならないことを減らすべきという内容でした。これを試合に応用させると次のようになります。
個人のミスに対して、ミスしてしまった選手ではなく、周りのプレーヤーにミスさせないようなフォローの方法、または、ミスしてもすぐ取り返せるフォローの方法についてアドバイスをおくるということです。そうすればボールホルダーは局面に集中できます。しかも、ゲーム的にもメンタル的にも安心してボールを持つことができるでしょう。ゲーム的安心とはミスしてもフォローがあるため大ピンチにはなりにくいということです。メンタル的安心とはミスしても怒られないということです。
このように「個人の解放」が目的であればどんな内容でもいいでしょう。大切なことはその試合の目標を達成することです。それを忘れずに選手を送り出さなければなりません。
まとめ
監督は気づいたことをなんでもいっていいというわけではありません。選手がプレーしているのであって、自分の仕事は選手たちにかかっています。目標を達成するためにチーム全体を見なければならないし、個人についてもメンタルという見えない部分を考えなければなりません。とても難しい職業だと思うけどだからこそ楽しいものだと思います。最後に今回の記事をわかりやすくまとめて終わります。
試合前 ①目標を立てる 試合中 ①目標を忘れない ②格闘技を意識する ③個人の解放
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